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年間約130万人の方が亡くなり、このうち相続税の課税対象になるのは1/10といわれています。しかし課税対象であろうが、なかろうが、1年で130万通りの相続が発生し、多くのトラブルが生じています。当事者にならないためには、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、二次相続の際に起きた相続トラブルを、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

長男が家を継ぐのは暗黙の了解だったが…

今回ご紹介するのは地方に住む、父、母、長男、次男、長女の5人家族です。どこにでもいる普通の家族といった印象で、3人の兄弟は普通に大学に進学し、普通に就職し、普通に結婚をしました。

 

ただ地域的に家は長男が継ぐもの、という考え方が根付いているところだったこともあり、長男は結婚後、両親と同居。いずれ両親に何かあった際には、実家は長男が継ぐという暗黙の了解が家族のなかにあったのです。実際、結婚した長男が実家に戻ることに、次男も長女も二言はなかったといいます。

 

長男が結婚し、数年後。長男に子どもが生まれ、実家は一層にぎやかに。父と母は初孫に夢中でした。そんなある日、父から「自宅を建て替える」という話がでました。

 

「この家を建ててから30年以上が経って古くなったし。孫も生まれて、ちょっと手狭じゃないか。だからいっそのこと、建替えてしまおうかと考えているんだ」

 

そのような提案に対して、長男は「建て替え費用は払う」という提案をしました。

 

「いずれ俺が家を継ぐだろう。だから家の建て替え費用は、俺が出すよ」

 

この建て替えを機に、実家は長男が3/4、父が1/4という共同名義に変更したといいます。新しくなった実家で、両親と長男家族の幸せな日々が始まりました。しかし数年経った冬の日のこと、悲劇は突然訪れます。父が亡くなったのです。風呂場で倒れているのを母が発見し、急いで救急車を呼びましたが、病院に着くころには帰らぬ人に。

 

あまりに突然のことに家族は悲しみを通り越し、ただ呆然とするばかりだったといいます。葬儀が終わり、落ち着いたころ、家族は集まり、父の相続のことを話し合いました。

 

「母さんと兄さんと分ければいいんじゃないかな」

 

次男からの提案でした。

 

「父さんの財産は、母さんがいてこそのものだろう。それに、もし母さんに何かあった際には、まずは兄さんががんばらないといけない。だから俺は父さんの遺産はいらないよ」

 

この言葉に長女も納得。結局、実家の名義(1/4)と貯金5,000万円ほどを母が、1,000万円ほどを兄が相続することになりました。

 

長男「母さんのことは任せて。何かあっても、俺が面倒をみるから」

 

長女「お兄さん夫婦がいれば安心ね」

 

次男「よろしく頼むよ、兄貴」

 

そんなやり取りがされた5年後のある冬の日のこと。今度は母が亡くなりました。

遺産分割協議の場で、長男への不満が噴出

母も父のときと同じように、お風呂場で倒れていたのを長男が発見。病院に運ばれましたが、そのまま帰らぬ人になりました。

 

「天国のお父さんが、寂しいってお母さんを呼んじゃったのかな」

 

突然の母の死に、悲しみにくれる子どもたちでした。そして葬儀と納骨が終わったある日、母の相続のことで話し合いがもたれました。

 

長男「母さんの遺産だけど、実家が1/4ほど、あと貯金が8,000万円ほどある」

 

長女「父さんの遺産を相続したときより、貯金がずいぶんと増えていない?」

 

父が亡くなったとき、母が相続した貯金は5,000万円ほど。たしかに年金暮らしだった母が亡くなるまでの間に3,000万円もの収入があったことは不思議なことでした。

 

長男「母さんのお父さん、つまり俺らからみておじいさんな。そのときの相続で、母さん3,000万円ほど相続していたらしいんだ。もしものときにと、まったく手をつけていなかったみたいだけど……」

 

次男「少しくらい、贅沢をすればよかったのに……」

 

長男「そうだな」

 

倹約家で、質素な暮らしを好んでいた母でしたが、それが本心からだったのか、いまや確かめようがありません。「何かあったときに困るといけないから」と母だけが我慢をし、子どもたちには決して押し付けようとしない――子どもたちの脳裏には、そんな母の姿ばかりが目に浮かぶのです。

 

「感傷に浸ってばかりいたら、前に進まないから、話を進めよう。母さんの遺産だけど、実家の残りは俺が継ぐだろう。あと貯金は3等分でいいかな」と遺産分割の話を進めようとする長男。そこに待ったをかけたのは次男でした。

 

次男「ちょっと待ってよ兄貴。それはもらいすぎだろ」

 

長男「えっ!?」

 

次男「あの家って、どれくらいの価値があるの?」

 

長男「えっと、たしか9,000万円……」

 

次男「仮に9,000万円だとしたら、母さんの遺産は……2,250万円だろ。さらに貯金も3等分したら、兄さんは5,000万円近く相続して、俺らはその半分ほどってことだ。それは不公平だよな」

 

長女「そうね。それに兄さんは父さんが亡くなったときに1,000万円、相続しているわ。その分も考えると、ほんと、不公平よね」

 

長男「ちょっ、ちょっと待てよ! あれは母さんの面倒をみるからって約束で」

 

長女「お母さん、亡くなる直前まで元気だったじゃない。お母さんの面倒なんてみてた? むしろ、兄さん家族のほうがお母さんのお世話になっていたんじゃない?」

 

長男「いや、そんなことないし……。それに家を継ぐのは暗黙の了解だったよな。それを遺産のなかに入れられたら……」

 

次男「そもそもさあ、長男が家を継ぐって考え方自体、古いよな」

 

長男「えっ!?」

 

長女「そうよ。私たちは、自分たちで家を買ったのよ。自分たちのお金で家を手に入れたの。お兄さんとは違うのよ」

 

長男「この家を建て替えたお金は俺が……」

 

次男「俺らだって、買った家が古くなったら建て替えるさ。兄貴のは“買った家”ではないだろう。俺らとはスタートラインが違うんだ。そこを考えないで公平にといわれても、こっちが困るよ」

 

 

遺産分割協議の場で噴出した、次男と長女が抱いていた長男への不満。結局、遺産分割は、次男と長女の意見を尊重して行われたといいます。しかし、遺産分割の場で生じた兄妹の亀裂は、いまなお、尾を引いているのです。

相続トラブルは「二次相続」で起きやすい

相続トラブルは、一次相続よりも二次相続のときのほうが起きやすい傾向にあります。一次相続の際には、母(父)がストッパーとなりトラブルは起きにくいのですが、二次相続ではストッパーになる人がおらず、兄弟間で争いに発展してしまうのです。

 

今回の事例では遺言書もなかったので、長年の不満が遺産協議の場で噴出してしまいました。遺言書があれば、ある程度防げたかもしれません。

 

さらに事例では一次相続の際に母が結構な額の相続を受けていますが、もう少し考えてもよかったかもしれません。

 

通常、配偶者は、法定相続分と1億6000万円のいずれか多い金額まで、相続税が非課税となります。簡単にいうと「夫婦の間では最低でも1億6000万円まで相続税がかからない」ということです。しかし、配偶者の税額軽減があるからといって、必要以上の金額を配偶者に相続させてしまうと、結果として損をしてしまう可能性が非常に高くなるのです。

 

それは一次相続で配偶者がたくさん相続すれば、確かにそのときの相続税は少なくなりますが、一次相続で配偶者が多くの財産を相続すると、次に、その配偶者が亡くなったときの相続税が高くなります。一次相続と二次相続とでは、仮に、同じ金額の財産を相続する場合でも、圧倒的に二次相続のときのほうが、相続税は割高になります。

 

「一次相続では、奥様が今後これだけあれば安心して暮らしていける、と思える金額を相続してください」

 

筆者はそうアドバイスしています。

 

 

【動画/筆者が「相続税の配偶者控除」を分かりやすく解説】

 

橘慶太

円満相続税理士法人

 

円満相続税理士法人 代表 税理士

中学・高校とバンド活動に明け暮れる。大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人山田&パートナーズに正社員として入社する。

税理士法人山田&パートナーズでは相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算300件以上。また、三井住友銀行・静岡銀行・ゆうちょ銀行を中心に、全国の銀行で年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。

税理士の使命は、難解な法律や税金をできる限りわかりやすく伝えることだと考えている。平成29年1月に表参道相続専門税理士事務所を設立し、平成30年より法人化に伴い、円満相続税理士法人に商号を変更した。

著者紹介

連載円満相続税理士が楽しく解説!「相続の基礎知識」

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